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いまだ議論が絶えないコロナワクチン~これまで記事の振り返り~

 10月から季節性インフルエンザワクチンの接種が開始されましたが、それよりもコロナ(COVID)ワクチンの定期接種も始まりました。
コロナワクチン定期接種、全国で開始 65歳以上の高齢者ら対象(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
 2020年に国内で初めてCOVID事例が確認されてから、流行状況やウイルス型の変化に加え、法的な措置もこの3年半の間に大きく変化してきました。ワクチンに関しても国内では2021年2月から使えるようになり、短期間に変化するウイルス型に対応したものが次々と開発されてきました。少なくとも重症化する事例が少なくはなかったデルタ株の流行時期までは、その役割は
大きかったと思われます。医療者である私自身も優先接種の機会があったことから5回目の接種までは行いました。私は感染症専門医ですので「ワクチンで予防できる感染症に対してワクチンは最も確実で簡単なツールである」という考えは変わってはいませんが、オミクロン株流行以降、特に抗ウイルス薬が使用できるようになってからのCOVIDワクチンの意義についてはどうしても懐疑的にならざるを得ませんでした。多くの有識者や学会の見解などと反する意見になることでもあり、文書としての発言は控えてきましたが、これまでの自身が発信してきたことを振り返りながら記事にしてみました。

新型コロナワクチンに関する最近の報道について思うこと|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2021.2.22 投稿)
 2月17日から始まったCOVIDワクチンの話題が大々的に報じられ、映像で流れた医師の接種法が明らかに間違っていたことが話題になりました。また初めて確認された副反応も大々的に報じられました。これまで基本的感染対策でしか予防することができなかったCOVIDに対して、発症予防と重症化予防が可能となるということで感染制御に貢献できるのではないかという大きな期待があった時期でしたので、私たちもこの時点までの様々な研究成果や報告された文献などを参考に積極的に接種を促す内容の情報発信をしていたことは事実です。接種回数が少ない段階で十分な安全性を担保することはきわめて難しいことは確かではありますが、この時点では重篤な副反応が目立っていなかったこともこれまでのワクチンとほぼ同様と考えられ、積極的に推進していく意義は医療提供体制の維持のためでもあったと思います。

新型コロナ収束へ向けたワクチンの評価と今後の見通し|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2021.4.17 投稿)
 
私はこれまで小児の定期接種および渡航者のワクチンを提案する際には必ず「メリット・デメリットの天秤」を例えに接種の意義について説明を行ってきました。この時点ではデルタ株発生前の起源株の流行中であり「変異する可能性も含め、さらに増加する可能性がある」「高齢者だけではなく全年齢層で重症化の可能性がある」という公衆衛生学的な懸念事項に対して「諸外国の先行した接種状況により抑止効果がみられていること」から「感染症発症を予防すること」であるメリットがきわめて大きく、デメリットである(現在で言えば問題視されている)「重篤な有害事象の頻度やワクチン接種によるLONG COVIDと類似した症状が目立たなかったこと」から推奨されるべきワクチンに位置付けた訳です。しかし重篤な有害事象がなかった訳ではなく、公開されずに経過措置とされたのであればメリットだけが強調された可能性はあるのかもしれません。当時の記事ではわかっていることしか明記していません。

健康な方に薬剤を投与するわけですから、本来の予防効果よりも接種による有害事象の頻度が少しでも高ければ接種する意義は低くなります。すなわち、接種することによるメリット(=感染症発症を予防すること)が接種することによるデメリット(=有害事象)よりもはるかに高い場合に推奨されるワクチンとしての位置づけとなります。デメリットが大きかったワクチンの最近の例としてデングウイルスワクチンがあり、接種した人が感染した場合に重症化してしまった事例があったため、接種が中断されてしまいました。優れたワクチンは「罹患する人が多い感染症」かつ「重症度が高い感染症」を予防することができるワクチンとなります。新型コロナワクチンはどのあたりなのでしょうか?

新型コロナ収束へ向けたワクチンの評価と今後の見通し|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)

今後さらに増え続ける、今後問題となり得る変異株による再感染を繰り返す可能性と、高齢者に特化した致命率だけではなく変異株による若年者も起こり得る重症化の可能性からすれば新型コロナウイルスワクチンはかなり理想的な位置づけになるのではないかと考えます。また当初懸念されていた副反応も確かに2回目接種の際により強く現れるような報告が増えてはいますが、諸外国での免疫効果を鑑みれば公衆衛生学的にはきわめて推奨度が高いワクチンであると考えられます。最も接種が進んでいるイスラエルでは、13日までに国民の約53%が全2回の接種を終え、ピーク時に9千人超だった1日当たりの新規感染者数は14日の発表で約200人にまで減少していますのでワクチンによる予防効果は明白です。

新型コロナ収束へ向けたワクチンの評価と今後の見通し|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)

新型コロナワクチン接種で得られる中和抗体の意義と持続期間に関する話題|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2021.7.25 投稿)
 
この時期になるとワクチン接種によって獲得した中和抗体価の測定が可能となりました。私自身も定期的に抗体検査を実施していましたが、想像以上に抗体価の減衰が早く、またある程度の抗体価があっても罹患してしまう方(いわゆるブレークスルー感染)も散見され、これまでの不活化ワクチンと同様に定期的に接種しなければ発症予防は維持できないのではないかという疑問も生じ始めた頃です。ただ依然として接種をすることにより重症化の回避ができることは確認できていたことからリスクの高い方々への接種は優先されていました。

どのくらいの数値の抗体価が得られるのかその抗体価で本当に発症が予防できるのか抗体価の減衰はどのくらいのスピードで起こるのかなど、まだまだわからないことは少なくありません。さらに実際に新型コロナに罹った人はワクチン接種をすべきなのかもこれからの課題となっています。すなわち既に罹った人や2回のワクチン接種をした人たちが将来的に新型コロナに罹る可能性があるのか、罹らないのかは現段階では未知の領域でこれから多くのデータが出てくると思われます。

新型コロナワクチン接種で得られる中和抗体の意義と持続期間に関する話題|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)

新型コロナワクチンに関する副反応について思うこと|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2021.8.28 投稿)
 
副反応がやたら多く本当にそうなのかと推測されたことから記事にしたのですが、当時は手技の問題やこれまでのワクチンと類似した副反応を過剰に捉えているものではないかと考えていました。しかし今になって思えば接種回数が増加するにしたがってm-RNAワクチンの問題点が徐々に顕性化してきた時期だったのかもしれません。

新型コロナワクチン接種後に帯状疱疹?|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2021.12.8 投稿)
 
副反応の報告が散見される中で、帯状疱疹の患者さんが増加傾向である背景にCOVIDワクチンとの関連性が示唆される報告が散見され始めた時期です。その後の調査によって明確な関連性はないことが証明されたのですが、帯状疱疹は免疫状態が低下することによって発症することを考えれば、人によってはCOVIDワクチンによる影響を完全に否定することはできないと思います。

5-11歳の子どもへの新型コロナワクチン接種をめぐる課題|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2022.2.23 投稿)
 オミクロン株の流行に置き換わり、小児へのCOVIDワクチン接種が開始された時期です。この時に私は「日常生活に支障をきたさない健康な5-11歳の子どもに対しては新型コロナワクチン接種を推奨する明確な根拠がない。しかし重症化のリスクがある基礎疾患をもつ同世代の子どもに対しては推奨する」「それでも我が子に接種させたいという親御さんがおられれば止めることは致しません」とコメントしています。現在に至っても小児に対しては推奨すべきワクチンとは言い難い状況です。

第7波は最もきつかったが、対策如何にかかわらず乗り越えられた印象|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2022.9.1 投稿)
 これまででもっともCOVID罹患者が多かった時期です。乗り切った後に感じたことですが、結果的にその時期のワクチン接種による感染拡大抑止効果があったのかどうかは正直疑問でした。重症化が回避されたことは事実かもしれませんが、既に行われた複数回のワクチン接種、感染者急増によるある程度の集団免疫獲得によるところなどが少なからず影響したのではないかと考えています。その理由の一つとして、接種したばかりなのにCOVIDに罹患している方(現職の総理も確か・・)も少なくはなかったように記憶しています。さらに当時の報道で一部の有識者は、オミクロン株に対応した2価ワクチンが開始されることがわかっているにもかかわらず、それを待つことなくいわゆる型落ちのワクチンを積極的に勧めるような発言を繰り返してきたことには大いに違和感を覚えました。

決して高くはない発症予防効果であるにもかかわらず「発症予防効果が示された」と報道され「感染拡大を抑えるためにワクチン接種を勧める」という見解が示されたことには賛同しかねます。しかも来月から予定されている2価ワクチン(従来株+BA1)を待たずに4回目接種を急がせる理由も解せません。あたかも発症予防効果のために接種を推進する一部の有識者の発言ぶりは明らかに誤解を招いている印象ですし、忖度や利権が働いていると疑わざるを得ません。ちなみに3回目接種が始まったばかりの頃は少なくとも陽性者で3回接種済の方はおられませんでしたが、今回の流行では4回目接種済の方(接種開始は7月)でも陽性になる方が散見されています。

第7波は最もきつかったが、対策如何にかかわらず乗り越えられた印象|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)

新型コロナよりも知って欲しい高齢者へのワクチン|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) (2024.1.21 投稿)
 多くの方が一度は罹患し、ワクチン接種も一定の方が複数回接種し、2年近く大きな変異を起こすことなく経過している現時点において、改めてCOVIDワクチンの意義について考えてみた投稿です。

デルタ株までは「高齢者を中心に重症化リスクが高く、ワクチン接種によってそれを回避することができた」「副反応も一定の割合で確認されていたが重症化の回避におけるメリットが高かった」ことは多くの研究結果にもある通り確かな事実であった思います。しかしその後の様々なデータの蓄積によるデメリットも見過ごすことができなくなったのも事実です。
 例えば「これまで存在したワクチンの中でも副反応の頻度がきわだって高く、なかでも接種との関連性が否定できない死亡例が明らかに多い」「ワクチン接種をすることでCOVID後遺症に類似した副反応が一定数みられる」「接種を何度行っても感染制御を確実にすることが難しい(発症予防効果はかなり低い)」等々、現在ではメリットとデメリットの差がほとんどないような印象です。むしろ健康な人がワクチン接種をしたことで日常生活に支障をきたすほどの健康被害を被ることはデメリットしかないわけで、その確率も他のワクチンに比べれば無視できない高さと言わざるをえません。ウイルスは変異を繰り返すとはいえ、オミクロン株以降は2年近くウイルス自体が重症化している兆候はみられていませんので、既存のワクチンであってもある程度の接種をしていれば重症化の回避ができなくなるわけではないと考えられますし、現在では重症化を回避することが証明されている抗ウイルス薬(パキロビッド®など)も使用できるわけです。むしろ接種を続けている中で取り返しのつかないデメリットに遭遇する可能性が許容できない範疇であれば推奨されるべきものではないと考えています。

新型コロナよりも知って欲しい高齢者へのワクチン|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)

 これまでの3年半の間、その時期によってわかっていること、わからなかったこと、発信すべきこと、発信すべきではないことなどを試行錯誤しながら記事にしてきましたが、今ここで読み直して改めてコメントしました。
 結論として、m-RNAの投与によって作られる抗原となるスパイクタンパクは個々の体内で多くは有害ではなく抗体を獲得できていると推測されますが、ワクチン接種によることが明確に否定できない死亡事例、接種後に引き起こされたLONG COVID類似の病態など、一部では病原体と同様またはそれ以上の有害反応を引き起こす可能性を秘めている以上、いつまでも広範囲の対象者に「重症化予防の維持」という名目を掲げることは疑問です。
 そもそもこれまで複数回のワクチン接種を行ってきた日常生活に不自由のない高齢者が重症化する可能性は3年前に比べればはるかに低くなっている状況であり、時間が経過しても免疫がなくなることはないのです。しかも現在では重症化リスクを回避できる抗ウイルス薬も使うことができるようになっており、早期の内服で症状軽減効果も期待できます。むしろ発症予防効果の低いワクチン接種に重きを置くよりも、罹患してしまった場合に早期にウイルスを排除する方が最近のLONG COVID(罹患後症状)の病態生理から鑑みるとメリットが高いようにも思えます。但し高齢者施設に入所している方々や入院している方々が罹患した場合には依然として重症化リスクが高いことはデータとして示されています。

 今回の定期接種に新たなタイプの「レプリコン」と呼ばれるワクチンが承認されたことで追加されました。m-RNAが体内で持続的に増殖するもので少量で免疫が長く維持されることがこれまでのm-RNAワクチンと異なるところです。しかし、このワクチンは治験の段階で複数の死亡者が確認されており、その事実が許容できるものなのでしょうか?公式には許容できるとの見解ですが、私見では一人でもそのような事例が確認されれば承認に至る前に再度検討する必要があるのではないかと考えます。また世界で承認されたのは日本だけということもあり、なぜ他の国では承認されていないのでしょうか?これまでのm-RNAワクチンに関する有害事象を振り返ってみれば、単純にその反応が長く体内で起こり得る訳であり、これまでと同等に安全性が高いと言えるのかきわめて懐疑的と言わざるを得ません。そのような状態で定期接種に組み込まなければならない特別な理由があるのでしょうか?
 ただ既に定期接種は開始されていますので、もし私が接種希望者の中でレプリコンワクチンに関するご相談を受けた場合には「他にも選択肢があるのである程度のデータが揃うまでは控えるべき」と回答します。これは単なる反ワクチンということではなく、懸念材料があれば踏みとどまることも必要であるということを申し上げたいということです。

#日経COMEMO #NIKKEI


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