気候変動とメディア〜2022 note / 日経COMEMOで取り上げたトピック振り返り
2022年1月1日の夜にふと申し込んだ気候変動について学ぶ12週間のオンライン講座。受講を決めたのをきっかけに、2022年は1年をかけて気候変動をテーマに学び、情報発信する実験の連続でした。
2022年がまもなく終わりを迎えるというタイミングで、以下5つの切り口で1年を振り返って見たいと思います。
【1】気候変動というテーマが大切であることの実感
2022年を振り返った際に印象に残る関連キーワードとして、「ウクライナ侵攻」、「インフレ」、「エネルギー危機」、「異常気象」等が思い出されるのではないでしょうか。「脱炭素/気候変動対策」より「エネルギーの安定供給」という印象を抱いた方も多いかもしれませんが、その一方で米国で8月に成立した今後10年間に渡って約54兆円の予算規模で実施されるインフレ抑制法(IRA:Inflation Reduction Act)の成立はとてもインパクトのあるものでした。こうした政策が呼び水となってEV、再エネ、製造業やライフスタイル、代替肉、農業、炭素除去等、今後あらゆる分野でのイノベーションが進み、スタートアップ企業の躍進も期待されることになりそうであることを感じます。
気候変動関連の事象を理解することは相変わらず「難しい」と感じることが多いです。「カーボンプライシング」「カーボンクレジット」等、メディアの記事を読むだけでは理解が及ばない、恐れ多くてSNS等に記事のシェア等はできない、と思ったことも多くあります。とはいえ、年初に受講した初心者向けの気候変動について学ぶ「オンライン講座」のおかげで大まかな概要理解を得ることができたのは大きな自信となりました。英語環境での講座ですが、ご興味ある方には自信を持ってお勧めしたいと思える内容でした。
【2】climate tech - ビジネス、スタートアップの勃興、そしてキャリアチェンジをして課題解決をしようとする機運の盛り上がり
気候変動を新しいテクノロジーで、スタートアップベンチャーを創業して取り組む多くの人の存在を目にする1年間でした。気候変動対策に取り組む幅広い分野のスタートアップ企業群のことを「Climate Tech」(クライメートテック / 気候テック)という大きなテーマで括り、ビジネスを拡大させたり、大きな資金調達をする起業家の姿を数多く目にする1年でもありました。
過去25年間愛読している米ビジネス誌『Fastcompany』は2008年から毎年「最も革新的な企業」の選出をしているのですが、今年の3月に選出された上位企業のうち、トップ7つの企業が全てclimate techのスタートアップ企業だったことはとても衝撃でした。しかもその企業のことを殆ど聞いたこともなく、詳しい事業内容すら知らなかったということにも驚かされました。ただ、2022年末の時点において、これらの企業郡の日本における地名度という点においては、正直今もあまり高くないのでは、という印象を持ってます。今後3〜5年後の「答え合わせ」に向けて、注意深くこれらの企業の今後の活動に注目したいと思います。
ちなみに1位に選出されていた決済大手のストライプ社が「大気中の二酸化炭素除去市場の創出」を目指して仕掛ける事業は、その直後に「フロンティア」という1,100億円規模の取組をスタートし、日本のメディアでも注目され、存在感が少しずつ高まっているようです。
夏以降意識するようになったのがこうしたclimate techの分野にキャリアシフトをしようとする、或いは既にした人の姿でした。新しい分野に転職するためのネットワーキングを求めてあちこちにSlack上のコミュニティが生まれたり、専門メディア、ジョブフェア、オンライン講座等にスポットライトが当たるようになりました。秋以降に加速した「テック業界の大型レイオフ」という報道が更に追い風となり、テック人材の気候テック業界への大移動が一部の界隈では大きな話題となりました。
【3】海外と国内で流通する情報、メディア報道の量、切り口の違い
気候変動、climate tech等に関する情報を英語圏と日本語圏で比較してみるとその情報の量、切り口の多様さ、その質も含め、日本語での情報は限定的であると感じる1年でした。欧米メディアではブルームバーグ・グリーン、ワシントン・ポスト、AP、Financial Times、New York Times等、過去1年で目に見える形で気候変動関連の報道量、専属ジャーナリストの数が増えていることを感じます。
気候変動対策の切り口という視点、或いはキーワードで振り返った際、例えば欧米においては「気候変動(climate change)」や「climate tech」が主に利用される一方で、国内では気候変動に加え、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、SDGs、脱炭素という用語が一般的に利用されていることが分かりました。主要なプレイヤーとして欧米ではclimate tech分野のスタートアップ企業数多く誕生し、ベンチャー・キャピタルから巨額の資金が投資され、大きな存在感を持ちつつあります。日本国内ではあまり馴染みはないものの、2022年に欧米圏では「炭素除去」分野への注目が高まりました。
日本国内においては低炭素技術、水素、アンモニア混焼、そして原発等、既存の大企業への支援を通じ、「トランジション」と呼ばれる段階的な取組に注目が集まっています。また、EV(電気自動車)への取組については、日本では国内のエネルギー状況を踏まえ、全方位戦略(EV、ハイブリッド、水素燃料電池車)「推し」がますます鮮明になりつつあります。一方で欧米では鮮明にEVシフトを打ち出し、2022年末時点で自動車全体の販売に占めるEVの比率も、一年前の約6%から約10%に高まったと報じられてます。
【4】日本で起きていることについての英語での情報発信が限られていること
『気候変動対策に関して日本で起きていることが英語等のグローバルな言語を通じて海外に十分に伝わってないのではないか。』
実は実体験を通じて一番大きな気付き・発見となったのはこの点ではないかと感じています。
今年の5月1日に、気候変動に関する動向、イノベーションについて、英語で書かれている記事をまとめて週に1度ニュースレターとして配信するという実験的な取組をスタートしてみました。Linkedinが今年の春に新しく提供開始したばかりのニュースレター機能を利用して配信しているのですが、開始から約8ヶ月を経て、約1,000人の方に購読頂いています(日本語のニュースレターは4月1日にスタートし購読者数は現在約220人)。英語ニュースレターを購読される方は約7割程が日本人以外の海外の方で、欧州、アフリカ、インド等から、毎日少しずつ購読してくださる方が増えていることに驚きます。
▶Japan Climate Curation [英語:Linkedin ニュースレター]
▶ Climate Curation[日本語:Substackニュースレター]
毎週様々な英語のニュース媒体の中から日本で起きている気候変動関連のニュースを探しているのですが、その量が驚く程少ないというのが実感です。海外からの購読者が増えている背景には、海外居住の方で日本の動向を注視している方にとって現状情報が限られているからということがあるかもしれません。自分自身でオリジナルの英語での記事作成含め、もっと頑張らなければ、と2023年に向けて考えています。
【5】テーマを決めてニュースキュレーションをする際の便利ツールの発見
気候変動分野のリサーチを進める中で、今年も数多くの素晴らしいオンラインツールに出会うことができました。中でも以下のAI自動翻訳ツールの「DeepL」と要約サービスの「summari」は毎日利用するサービスとなりました。更に、英語でのニュースレター作成の際には文法チェックの「Grammarly」も欠かせないサービスになりつつあります。
また、ChatGPT、StableDiffusion等のAIチャットツール、画像生成ツールも2023年には大きな進化を見せてくれるのではないかと期待しています。
以上、まだまだ試行錯誤の途中ですが、記事を読んで下さっている皆様、いつも有難うございます。2年目も引き続き「気候変動とメディア」を切り口に、情報発信を続けていきたいと思います。
よい年末年始をお過ごしください🙂
📬気候変動・クライメートテックをテーマにした記事をキュレーションするニュースレターを日本語と英語で配信しています。よろしければご登録ください🌏🙂
・Climate Curation(日本語): https://socialcompany.substack.com/
・Japan Climate Curation(英語): https://bit.ly/JapanClimateCuration
▶2021年夏以降気候変動・脱炭素・クライメートテックについてCOMEMO記事として公開した記事のリスト
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